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育恩の峰より
奥之院思親閣別当 望月 海俊
流るる水の音までも……(みのぶ誌2014年6月号より)

 育恩のお祖師さまに面奉給仕し早2ヶ月。導師礼盤の後方に掲げられた大写真に認める祖父(思親閣36世別当)の視線を背に、当院開創以来先上人のご苦労と、ご丹精下さる全国のご信徒さまの尊いお気持ちに思いを馳せ、思親閣を預かる責務の大きさを、あらためて感じております。
 その祖父の内儀つまり私の祖母が、生前次のような歌を口ずさみました。「身延の者は声がよい〜」と。子供であった私は、瞬時に「毎日お経を唱えているからだなぁ」と思ったのですが、続く歌詞「よい筈だソレ 南天山の 水のむ ドッコイ 南天山の水のむ」(甲州盆唄)に、少々肩すかしを食らった懐かしい思い出があります。
 もっとも、南天には喉をいたわる効能があるようですので、身延山に育つ南天から、美声をつくる養分が沢の水に溶け込んでいるのも宜なるかなといったところでしょうか。
 さて当院におきましては、今でこそ普通に水を利用できるのですが、かつては専ら天水が頼りでありました。それ故、給仕者の苦労や参拝者の不便は如何ばかりであったかと思うところであります。
 斯様な状況下、大聖人へ浄水をご供養したいという歴代別当の切なる願いがあったのですが、機が熟し仏祖三宝諸天善神のご加護を得て、十方の信徒のご丹精尽力のもと、36世望月堯海別当代・昭和36年6月10日、電力ポンプによる揚水事業落成法要の虔修をみるに至りました。
 爾後、有縁の皆様のお力添えのもと、水源の保守保全および施設の充実が計られ今日に至っております。
 奥之院思親閣にご登詣の皆様におかれましては、法華経と御題目万巻読誦の祖山の法水に喉を潤し、心身の落ち着きを得て、難転(南天)の功徳あらんことを祈念申し上げます。

合掌


追記
 2月の記録的大雪にて倒壊した仁王門脇の水屋(手水施設を覆う建物)。宮大工職人をはじめ関係職人による解体修復作業が始まりました。
 ご参詣の皆様にはご不便をお掛けしますが、ご理解ご了承下さいますよう御願い申し上げます。