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育恩の峰より
奥之院思親閣別当 望月 海俊
除熱得清涼……(みのぶ誌2014年8月号より)

 暑い夏を迎えました。身延山頂より謹んで暑中のお見舞いを申し上げます。
 昨今「猛暑日」という言葉をよく耳にします。このような表現を幼少期に耳にしたことがあったのだろうかと思うところですが、いずれにしても日本の夏は暑くなっているようです。
 さて、この時期、思親閣へご登詣下さる皆様は開口一番「涼しくて良いですね」と仰せになります。山麓よりの高低差763メートルを、約7分で移動されるのですから、その言葉には肌身で感じられた実感がこもっています。
 思親閣ご登詣の皆様にはお時間の許す限り、妙なる涼風にて心身を癒やして頂きたいものです。
 ところで、8月は各地でお盆の諸行事が執り行われます。お盆は皆様ご存じの通り、お釈迦様のお弟子である目連尊者が餓鬼道に墜ちた母を救った故事にちなむものです。この故事を、親を思うお寺に奉職する身で考える時、親は自身の食を断って迄も我が子に食を与へ成長を見守るその有様に、自らの身命を惜しまぬその慈恩に涙を禁じ得ません。又、子としての役目を諭される思いです。
 日々、思親閣での給仕を終え自坊に戻りますと、いつもと変わらぬ笑顔で、ふくよかな母が出迎えてくれます。その母に留守番の慰労をしつつ、人口に膾炙する『戯れに母を背負いてそのあまり軽きに泣きて三歩歩まず』を思い出し、「うちの場合は、その重きにかな」と、かたじけなくも冗談を交せる幸せを頂いております。
 思えば大聖人は母に甘えることもなく、偏えに南無妙法蓮華経を、人々の身・口・意に入れんと身命を賭して励まれました。その大恩に万分の一でも報じたいものです。
 8月15日は、大聖人の御母妙蓮尊尼のご命日。明後年に迎える尊尼の750遠忌に向かい、皆様と共に知恩報恩のお題目を育恩の峰にて唱えたいと思います。

合掌