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育恩の峰より
奥之院思親閣別当 望月 海俊
二母 国になし 今より誰をか 拝すべし―忘持経事―(みのぶ誌2016年10月号より)

 別当職を拝命以来、任期中にお迎えする妙蓮尊尼750遠忌に対し、その報恩をいかにして表すか腐心致しておりました。しかし思親育恩の峯にて奉じる報恩浄行「母への手紙」に数多の奉納を頂き、その数2万通に届こうかとしております。この様に血の通った尊い実践のひとつとして、皆様の篤い孝心をこの手に受け取る事は、大変感慨深いことでありました。
 また、来月号の「みのぶ誌」に遠忌法要の様子等が掲載されると思いますが、山梨県第1部寺庭婦人会による和讃の奉納。岡崎朋美氏の講演。そして身延としては初めての試みと思われる、女性教師式衆による法要と、女性のお力をおおいに賜りました。
 一連の女性出仕者の優しい声、たおやかな所作が、大聖人を慈しんだ妙蓮尊尼のお心を彷彿させ、参列者一同法悦裡に法要が虔修されましたこと、感謝と共に安堵しております。
 大聖人は、「世尊と申す尊の一字を高と申す 高と申す一字は又孝と訓ずるなり」(法蓮鈔)と、釈迦牟尼世尊の塵点劫に及ぶ修行の大孝心と尊い功徳を讃え、法華経こそ父母を成仏せしめる、内典の孝経と位置づけられております。それ故に、「法華経をたもつ人は 父と母の恩を報ずるなり」(上野殿御消息)とお示しです。
 さて、お手紙の拝受をもって、納経供養に順じさせて頂きましたが、大聖人ご在世、はるばる千葉より母の納骨に来山された富木常忍に対し、冒頭の句をもって哀悼の意を表しました。2人といないと語るお言葉に、大聖人の母に対する思いの深さを覚えるところであります。
 そして、今般の浄行を通じて、私たちが授かっている法華経とのご縁、更にかけがえのない母をあらためて思う機縁を頂いたことに感謝し、日々の信行の糧と致したいものです。

合掌