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育恩の峰より
奥之院思親閣別当 町田 英昭
梅雨の季節を迎えて(みのぶ誌2017年6月号より)

 奥之院は、年間を通じて霧に覆われる日が多々ありますが、特に梅雨の季節は、連日の如く霧の中に在ります。麓では好天気でも山頂は一変しますので、奥之院の参拝時には傘が手放せません。正に備えあれば憂い無しです。
 「備えあれば憂い無し」とは、普段から準備をしておけば、いざと言う時に慌てず、何も心配が無いとの意味ですが、しかし実際には、日頃からの準備の大切さを知っていても、多くの方が「後悔先に立たず」の経験を、繰り返しています。
 周知の通り、奥之院思親閣は日蓮大聖人が、ご両親様、お師匠様を追慕なされた育恩の峰です。
 日蓮聖人の立教開宗は、ご両親様との今生の別れであり「親によき物を与へんと思てせめてする事なくば、一日に二三度笑て向へと也(上野殿御消息)」の笑顔を交わす事も、更には「父母の墓をも見んと思へども錦を飾て故郷へは還れといふ事は内外の掟なり(光日房御書)」の教えに従い、慈父悲母のお墓参りも適わず、ご両親様への想いは、如何ばかりであったかと拝察されます。
 ただいま奥之院思親閣では、亡きご両親様を供養し、また、ご両親様の末永いご健康をお祈りする『父母への手紙』を募集いたしております。大切なご両親様へ、感謝の心をお伝えする「お手紙」です。
 諺に「親孝行したい時に親はなし」と御座います。親の有り難さがわかる年頃には、親はこの世には居ない。親が生きているうちに孝行せよ、という戒めです。
 備えあれば…では御座いませんが、失った後で感謝の気持ちを伝える事は、難しいものです。ご両親はもとより、常日頃から周りの方々に感謝の心を伝え、後々に後悔を残す事の無い、充実した人生を、誌友の皆様には歩んで頂きたいものです。

合掌