光明照世間
七面山別当より別当 小松 祐嗣
心の故郷(みのぶ誌2024年10月号より)
 一時の暑さが和らぎ、この原稿を書いている8月末、さあこれからと思った矢先に台風10号の影響で大雨です。日本全国、また七面山に被害がないことを祈るばかりでございます。
 9月は七面山では、一大行事の大祭を迎えました。9月18日から19日朝にかけて行われる大祭は、七面山開創に端を発します。日蓮聖人がお亡くなりになられて16年後、永仁5年(1297)9月18日にお弟子の日朗上人と南部波木井実長公が七面山に登り、一日中歩き通したところで一晩を明かし、翌19日、目が覚めたところ、まだ夜が明けきらない薄明かりの中、お二人の眼前に満々と水を湛える一の池が現れ、七面大明神様がお二人をお迎えになりました。それよりこの池のほとりには祠が建てられ、法華経修行の山として多くの人々を迎え入れ、現在の姿となっております。
 七面山は一年を通してお参りの方が途絶えることはありませんが、中でもこの開創を記念した大祭が最もお参りが多い日になります。毎月お参りの方も、一年にこの日と決めてお参りの方も、以前山務していた僧侶も皆が久しぶりの再会を喜び、労をねぎらい、笑顔で語り合い、普段よりちょっと豪華な夕食を共にします。
 古来より正五九参りというものがあります。様々説はありますが、一つにはその土地、その家の神様が御本体の元にお帰りになる月。だから自分も赴いてお参りさせて頂くというものです。この9月の大祭、そしてダイヤモンド富士を拝す秋彼岸中日は、全国各地の七面様が故郷にお戻りになり、さらに大きなご利益を得て各地へお戻りになるのでしょう。それは私達が七面山で旧知の方、または初めてお会いした方と心安らぐ一時を過ごすのと同じように、多くの七面様が笑顔で再会を喜んでいらっしゃるのかと思うと、なんだか楽しい気持ちがします。
 一年で最も御威光が高まった9月を過ぎ、お参りしやすい気候の秋、皆様のご登詣心よりお待ちしております。