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七面山別当より
別当 内野 光智
「雪」を以って(みのぶ誌2020年4月号より)
新型コロナウイルスの影響で日本国内多くの行事が自粛されるなか、桜は爽やかに咲き誇り大いに春を賑わせ、私どもの心に潤いを注いでくれております。
七面山も一ノ池の氷が溶けはじめ、遥拝所から望む富士山のお姿に僅かな霞がかかるようになり朝の冷え込みが柔らかくなってまいりました。
待ち望んだ季節が間近に到来致しておりますが、実は冬の間、七面山はちょっとしたキャンプのような生活になっておりました。
1月27日(月)から28日(火)に降った雪の量が思いのほか多く、50cmを超える積雪に耐えられず木が電柱を巻き込みながら倒れ28日から2月1日(土)まで停電、同時にまた違う箇所でも倒木が水道のパイプを切断し断水、配管の中に残った水は各所で凍結し破損、修理と温めて溶かしながら2月18日(火)にようやく復旧し敬慎院全館に水が行き渡るようになりました。
停電中はランタンを経席に置き、僅かな明かりを確保しながら朝・夕のお勤めを営み、マイナス15度の気温の中、合掌する手は痛く感覚を失い、夜は布団にもぐり震えながらも少しの温もりが睡眠を助長してくれました。
ダルマストーブで雪を溶かし、トイレに流す水、御飯を炊く水、口をすすぐ水等に活用するという、現代ではなかなか経験できない時間を過ごさせていただきました。SNS等で状況を知った御信者さんたちが飲料水・食物、またウェットティッシュなどを沢山寄贈して下さり、お風呂に入れないながらも体を拭き清潔に過ごすことができました。
何よりも、こんな状況でありながら七面大明神に滞りなく御給仕を申し上げることができましたのは温かい志を向けて下さった皆様のお陰であります。
雪により難を被り、雪に命を繋げていただき、七面大明神が「雪」を以って大きな気付きと忍難慈勝の御教えを与えて下さった冬でありました。