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七面山別当より別当 小松 祐嗣
夏の七面山(みのぶ誌2023年10月号より)
 今年は特に暑さが厳しい夏となりました。標高1,700メートルの七面山敬慎院では暑い日でも25度ほどですが、登山口の標高は約500メートル。日中登り始めますと13丁までに滝のような汗が流れ、登り下りに慣れている我々もバテてしまいます。そんな昨今ですので、過去には夏休み入りからお盆までは小さなお子様連れの3世代でのお参りが多かったのですが、ここ10年ほど真夏のお参りは非常に少なくございます。
 7月のある週末、小学校1年生の男の子がお母さん、そのまたお母さんと初めての参拝にやってまいりました。とても懐っこく、山務員僧侶にしがみついては遊んで元気いっぱい。しかし夜のお勤めの時にはお母さんに抱っこされぐっすりと眠っており、その姿は懐かしい山の風景でありました。
 さて、私の初参拝は、小学2年生の時、2つ上の兄と2人きりで、当時父が敬慎院に勤務しており、真夏の土曜日に突然登ってこいと言われ、午後3時からの登山でした。兄は既に何度か七面山の経験がありましたが、当時の私はなんだかよく分からず、ただ兄の後ろをついて歩くだけでした。13丁で雨が振り出し傘を借り。23丁では今では懐かしいオレンジ色の光の懐中電灯を借り。真っ暗の中に白い野犬が現れ、その犬は道案内をする訳でもなく姿を消し(笑)。36丁でカレーをご馳走になり。そこに法被を着た従業員さんが迎えにきてくれ、「おっちゃんが来たからもう大丈夫だよ!!」その声の力強さは今でもハッキリと覚えています。そしていよいよ敬慎院に到着。今思い返しても、不思議なことに道中不安は全くなく、ただライトを消せば墨をこぼしたような漆黒の中に煌々と灯りがついた伽藍、大勢の人で賑わう敬慎院、そしてお坊さん達に優しく迎えてもらった思い出が残ります。ふと思えば、その力強さと温かさが七面山の宝燈とも言うべき物なのかも知れません。
 今年お迎えすることが出来た子供達と、また来年お山でお会いしたいものです。