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育恩の峰より
奥之院思親閣別当 佐藤 順行
人間万事塞翁が馬(みのぶ誌2024年2月号より)

 表題は、運も不運も移り変わるので予測は出来ず、不幸に思えた事が思わぬ幸運につながるという、励ましの意味を含んで使われることわざです。おかげ様で本年3月一杯で今代は任期満了を迎えますが、この4年はまさしくこのことわざを実感した日々でありました。
 令和2年4月、別当就任前よりすでにコロナが世界中で猛威を振う中、今代は始まりました。覚悟はしていたものの、当初は参拝のお客様も限りなくゼロに近く、戦後最大ともいえる国難の中でどうしたら奥之院をお護り出来るか、只々それだけで頭が一杯でありました。執事、会計、山務職員と知恵を絞り、今出来る事は何かを考え、実践する日々でした。そうした中でもお越し下さる全国のお客様のお姿に励まされ、何とか毎日を乗り越えられました。すぐに終わると思ったコロナ禍も、気が付けば4年を迎える今も終息には至っていません。
 それでも何とかこの4年を乗り越えられたのは、ひとえに様々な制約や痛みを共に分かち、現場を支えてくれた献身的で忍耐強い山務職員を始め、久遠寺様関係各位、ご参拝やご支援を頂いた全ての皆様のおかげであります。大変厳しい状況下ではありましたが、何より任期中にお祖師様のご降誕800年と身延山開創750年の2つの慶賀の年をお迎え出来たのは最高の慶びでありました。
 また奥之院、自坊においても、この時だったからこそ頂く事が出来た尊いご縁も沢山ありました。更にはそのご縁により成し得た事も大小様々にありました。おこがましいかもしれませんが、ほとけ様、神様、お祖師様を始めとされる諸先師、諸精霊等、目には見えない大きな存在のお力、ご守護をこれまでの人生の中で最も実感させて頂く事が出来た4年間でありました。
 残り2か月程の任期ではありますが、初めて本格的な修行に入った学生時代の初心を忘れず、最後まで奥之院のお祖師様を始め諸天善神へのお給仕、集う諸精霊へのご供養に努めて参ります。4年間有難うございました。