毎朝、奥之院思親閣の祖師堂にて日々の平穏、ひいては世界平和・国家安泰を祈る中、育恩之峰祖師日蓮大聖人、ご両親、六老僧の宮殿(くうでん)を見ますれば大分傷んでいるように見受けられました。それもそのはずです。祖師堂建立からは約400年、宮殿新設からは約200年の時が流れ現在に至っています。前代の佐藤別当に相談したところ、現職の時に宮殿修復を発願されていたようですがコロナ禍の為、断念せざるをえず、志半ばにて任期満了となってしまったようです。その意を受け継ぎ、今代で修復できればと強く思い、身延山当局にその旨をお伝えさせて頂き、修復の許可を得ましたので皆様にご案内ご報告させて頂きます。
今から約400年の昔、身延山第24世顕是院日要代、元和5年(1619)前田利家側室・壽福院殿華岳日栄大姉が利家菩提の為に身延山奥之院祖師堂及び拝殿・五重塔を建立寄進。その5年後の寛永元年(1624)第25世妙寂院日深代に祖師堂落慶をみる。時流れ、第58世是運院日環代に宮殿新設。このような歴史的にも大変貴重な宮殿の修復に携われる事はこのうえない喜びと同時にとても責任のある事業である事は言うまでもありません。宮殿とは、我々でいうところの住居であります。日蓮大聖人、ご両親、六老僧の住居が長い年月を経て劣化が進んでおりますので、この代で修復し心地良い宮殿でお住まい頂ければと思っております。同時に日蓮大聖人、ご両親、六老僧のお衣も大分傷んでおりましたので新調させて頂ければ喜ばれると思い発願しました。
しかし、私一人の力ではどうする事もできません。多くの皆様に本事業の趣旨をご理解頂き、お一人でも多くの方にご賛助賜りますよう切にお願いする次第であります。
合掌
募集期間 令和8年8月
御厨子もしくは御衣
1口 1万円
丹誠された方のお名前を記した巻物を御厨子へ収める
私の娘は両手指に重度の障害(指が短かったり爪がなかったり)をもってこの世に生を受けた。坊主の娘が障害をもって生まれると自分の罪障(今までの積み重ねの罪)や因縁と揶揄され続け次第に仕事がなくなった。それはそうだ。安産祈願をお願いし「健康な赤ちゃんが生まれますように」と祈願をするのに、そのお上人の子に障害があれば「あのお上人にお経を読んでもらっても効かないんじゃないの」と離れていった。しかし娘は障害をものともせず育ってくれた。「なんで私だけこんな手なの」と一度も聞く事もなく。まして私のせいにするでもなく。私は娘が誕生して以来ずっと娘の手を人前に出す事さえ気にしてしまう愚かな親だった。そんな親よりも娘は強く逞しく堂々と自分の道を歩み続けている。隠す事もせずむしろ個性とし「神様が私にくれた手だから私はこの手が大好き。できない事も多々あるけどそれも個性(笑)」と。
私の好きな言葉に「一期一会」がある。一生に一度の機会。生涯に一度限りであること。私はどんな時でもその一瞬一瞬を大事に、決して軽視せず、その瞬間を真剣に生きようと心に決めた。それは娘の生き方から学んだ。くよくよしていても時は止まらず流れるだけ。また時間を巻き戻すこともできない。だとしたら今から過ぎ行くこの一瞬を楽しんだ方が賢明。それは相談者に対しても同じ。この縁をこの時間を大事に真剣に耳を傾ける事。おこがましいが聞いてあげる事こそが相談者の心の癒しになると私は思う。勿論、背中を押す事もある。
最後に皆さんの心の中には、強がる自分と押し潰されそうな弱い自分がいると思う。強がる自分を出しても決して強くはなれない。むしろ押し潰されそうな弱い自分をさらけ出した方が自分も周りも自然と優しくなれ温かい手が差し伸べられる。そんな日常を過ごしてもらいたい。いつの日か皆さんにお会いできる日を楽しみに、今日という日を最善の一日にしていこうと思う。
合掌
身延の山々が桜色に染まる季節、遠近各地より多くの参拝者が来山し、古来より伝わるしだれ桜を愛でていた3月25日に交代式を行い、身延山奥之院思親閣第55代別当に就任させて頂きました身延山本行坊第47世住職・山梨県中央市大和山蓮重寺第31世代務住職の下里是龍(しもざとぜりゅう)と申します。
本行坊は鎌倉の比企ヶ谷(ひきがやつ)の比企能本公「本行院日学上人」により開かれ、祀られている帝釈尊天は当時、奥之院思親閣に祀られておりましたが能本公開創の当院に遷座され、今日に至っております。
歴代の別当上人が今日まで一心におまもりをされてきた日蓮大聖人の魂が宿る育恩の峰、奥之院思親閣。その重責を任され、はたして自分にその任がふさわしいのかと自問自答する毎日ではありましたが拝命した以上、また山務員・職員の命を預かる者として責任を持って奥之院思親閣の運営に取り組む覚悟です。今、自分にできる事に背伸びせず向き合い遠近各地より来山して下さる寺院・檀信徒・一般の皆様に気持ち良くお参りして頂けるよう日々、一期一会の精神で山務員・職員と共に尽くして参る所存であります。
幸いにも第49代遠藤是淳別当代に思親閣の執事会計という立場で3年間奉職させて頂き育恩の峰思親閣の日蓮大聖人にご給仕させて頂けた事、また昨秋より日蓮宗大荒行堂に5回目の修行に行かせて頂き五行皆伝・血脈相承の許を頂けた事も大きな自信となりこれからの3年間、別当の重責、職務完遂の為、努力して参ります。
頼りない別当ではありますが皆様のご支援と山務員・職員の協力を得ながら3年間励んで参りますのでどうぞよろしくお願い申し上げます。
皆様の健康と日々の安穏を思親閣より一心にご祈念申し上げております。また山務員・職員一同皆様のご来山を心よりお待ち申し上げ、就任の挨拶とさせて頂きます。
合掌
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