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育恩の峰より
奥之院思親閣別当 佐藤 順行
餅つき追憶(みのぶ誌2023年2月号より)

 「会計さん、餅つきやりましょう」。当時、山務員だった今代の小松執事が私に言った言葉です。私は二つ返事で快諾。毎年、自坊で餅つきを行っていたので臼と杵も用意が出来ます。もち米は小松執事が育てた物があったのでそれを使う事に。あれから早や15年。5代に亘り別当上人を始め山務員さんが現在まで続けて下さっています。今ではリピーターも増え、これまでに自作の杵や臼を奉納して下さる方も居られました。昨年末も餅つきの時間を確認されるお電話を数件頂き、楽しみにして下さっている方々が居られる事を実感した次第です。
 今年も三が日の午前10時と午後1時の合計6回行いました。奥之院の餅つきはどなたでも参加自由です。親御さんと一緒ではないとつけない小さなお子さんから、お年を召された方まで多くの方がついて下さいます。当初は初詣にいらして下さるお客様に少しでも楽しんで頂くように、また今ではご家庭では中々できない餅つきの日本文化を、特に親子の方々に体験してもらえればという想いを小松執事と語り、始めた餅つき。今代が始まった令和3年のお正月はコロナ禍真只中。全国で餅つきも中止の報道が多かった中、熟慮の上、細心の注意を払いながら続けて行いました。結局、3年間コロナ禍での開催となりましたが、多くの皆様が参加して下さいました。餅つき中や、つきたてのお餅をほおばる際の皆様の笑顔を拝見すると、続けて良かったと何度も想いを新たにしました。
 元日、初回につきあがったお餅は思親閣のお祖師様にお供えさせて頂きます。お祖師様も身延山でのご生活の際、時折お餅や粽のご供養を頂いた事が御遺文に記されています。物資の乏しい山中での事、貴重なお餅のご供養は殊の外お喜び下さったはずであります。コロナ禍に負けず、初詣の皆様が力を合わせ楽しくついたお餅を、お祖師様もきっとお喜びになり、お召し上がり下さっている事と存じます。