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育恩の峰より
奥之院思親閣別当 佐藤 順行
信仰の相続〜後ろ姿で〜(みのぶ誌2023年11月号より)

 私の拙いお話も残り2回となりました。ですので今回は皆様にお願いを1つ。
 昨今、世間では終活という言葉をよく耳にします。誰しもが迎えるその時の為に、残された家族が困らないよう葬儀、相続等の事を前もって手筈を整えておく活動の事だそうです。その中でぜひ最初に心掛けて頂きたいのは、信仰の相続であります。財産は多いに越した事はありませんが往々にしてそれが不仲やトラブルの原因となる事があります。そうならない為にもまずは信仰の相続を心掛けて頂きたいのです。私達は皆、仏様の種を授かっています。ですが、その種にはお題目、法華経の御教えという正しい肥料を与えなければ芽吹く事はありません。その種が芽吹いた時に、感謝や助け合い、慈しみといった心が生まれます。そうした心が育まれていれば、残して頂いた財産も円満に受け継ぐ事が出来るのです。ひいては子供達がご家族が、更には地域や社会が栄える力の源にも成り得るのです。
 お祖師様はご在世の折、「力あらば一文一句なりともかたらせたもうべし」と仰せられ、自身の修行と共に、たとえ一言でも伝え他者をも導きなさいとのお言葉をお遺しです。とは申せ、子供や家族に面と向かい話したり説明するのは難しくもあり、照れ臭くもあります。そうした時はぜひ、皆様の手を合わせるその後ろ姿を見せてあげて下さい。今すぐには伝わらなくとも、いつか皆様がお仏壇やお墓で手を合わせる後ろ姿、お寺や身延山にお参りされるその後ろ姿を思い出し、あの時手を合わせていたのは、こんなにも家族をご先祖様を大事に想ってくれていたからなんだと気が付く日が必ず参ります。後ろ姿で導く事が出来るのです。「行動は言葉より雄弁に語る」との格言の如く、時として言葉よりも多くのものを姿や行動で伝える事が出来るのであります。どうぞこれから、一瞬でも多く皆様の手を合わせる後ろ姿、お参りに向かわれるその後ろ姿をご家族、有縁の皆様に見せてあげて下さい。合掌。